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vol.42 ついに気が狂った水島新司  

 ドカベン、もうプロ野球編の方が長いんではないんだろうか。連載誌はドカベン本編と同じ少年チャンピオンだが、少年チャンピオン読者のいまどきの小中学生はアレをどう思っているのだろう。続いてるんだからファンがいるんだね。シブイ小中学生だね。
 プロ野球編なので実名の球団、野球選手も登場する。優勝チームとか、現実の流れ とリンクさせなくてはならず、どうも水島新司は現実と自分の漫画世界の区別すらつかなくなっているのではないかとの懸念も最近は出ている。水島新司、もう、やばいんではないかと。結構老人だし。
 ドカベンは私の少年時代、周りの人間は結構みんな夢中で読んでいたとおもう。私はあまり好きではなかった。梶原一騎系のやつ、魔球が飛び出したり、信じられない ような特訓があったり、超人的なライバルが現れたりする根性系のやつが好きだったので、無表情なデブが汗一つかかずに淡々と試合をこなしていくドカベンはたるい漫 画に思えた。しかし、超人と言うよりは超個性派キャラ(変人)達がライバルとして 、チームメイトとして続々出現するこの漫画のよさを最近ようやく分かってきた。実写 板もまた観たい。
 さて、プロ野球編は大体高校時代一緒にやっていた超個性派キャラ(変人)達と現実界の野球選手が混ざり合って試合を続けているが、今季のシーズンオフに水島氏は 新たな超個性派キャラを投入しようと試みた。これが凄くヤバイ。そして、面白い。
 主人公山田太郎は西武の中心選手なのに何故か今でも長屋住まい。屋根の上に重しの石と石止めの角材が乗っかっている(そんな家今どきあるんだろうか)。屋根に勝手に上がって石止めの角材を持って行こうとしている男を発見。顔つきもものすごく怪しい。注意すると男はこう言う。
「この木は、苫小牧産のアオダモの木だ。バット 造りに最も適した木だ。さすが山田だな」
そんなこと全く気付かなかった山田、呆気 にとられる。「名を名乗れ」と、言うと。
「俺の名前を知ると不吉が起きるぜ」
と、 訳の分からないことを言って山田家の屋根の木を持っていってしまう。
 翌日、新聞を読むと、オリックスに新たに入団した選手としてその男が取り上げられている。驚く山田。男の名前は「不吉霊三郎」「あいつは名前を聞くと不吉なことが起きると言っていた。名前が不吉だからか?」心の中でつぶやく山田。なんだそれ。そんな男の名前が新聞に載ったら日本全国民が不吉の渦に巻き込まれてしまうではないか。

 

 この不吉霊三郎は信濃川大学という酒造り専門大学の出身とのこと。野球部はない 。酒造り専門大学って何だ。12月14日発売号の最後のコマは「それにしても不吉の造った酒、うまいな」と舌鼓を打つ仰木監督の様子が1ページまるまる使って描かれている。「酒造りに比べたら野球なんて簡単だ」と豪語する不吉霊三郎。野球経験はあ まりないようだが、バット造りにはこだわりがあるらしい。謎めいているのを通り越 して不条理キャラになっている。  野球よりピアノが上手いのに何故か野球をやめようとしない山梨弁の男、殿馬とか 、どう考えても舌から双葉が生えているとしか思えない学帽をかぶったままプロ野球 のバッターボックスに立つ男、岩鬼とか、わら人形でライバルを金縛りにする男とか 、岩手から甲子園まで歩いてくる山伏みたいな連中とか、名字が微笑で実際顔が笑っ たままの男とか前々から、キャラの変さでは定評のあるドカベンだが、ここへ来て事 態はますますわけが分からないことになって来ている。極めつけキャラの不吉霊三郎 の今後の活躍と共に、さらなる異常なキャラの登場に期待しよう。  しかし、大丈夫なのかね、水島新司。 


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