「つまらなかった。金返せ」と言われることは本当に悲しい。金を払ってせっかく観に来たお客様全てを満足させられればでんなにかいいだろうと、いつも思ってやってはいるが、現実問題なかなかそうはいかない。そうなるとほとんどのお客様が「まあまあ可もなく不可もなくって感じで適当によかった」みたいなところに落ちつくのがいいかというとそうは思わない。「物足りない」「もっとやってほしい」という客が一人でもいないように徹底的にやらなくてはと、思ってしまう。するとヒステリックに拒否反応を示す客が今度は出てくる。これは悲しいことだがある程度は仕方がないことだ。全ての客を満足させることが出来ないのなら最大多数の客をほどほどに満足させるよりもはっきり好きか嫌いか強引に問いかける表現の方をとる。これは性ってやつだ。すると拒否反応、勘違い、様々な感情を織りまぜたアンケートが返ってくる。不謹慎かもしれないがそれらを読むのは非常に楽しく、やる気を起こさせる。一公演あたりの動員が100人に満たなかった頃からアンケートの回収率だけはよかった。そんなアンケートをせっかく書いて下さった方々の為にここでは創作者である私がいくつか見繕ってコメントさせて頂く。
今回の芝居にアナルは出てこなかったと思うが・・・彼には見えていたのだろうか・・・のっけからサイキックなコメントありがとうございますって感じだ。ちなみにアナルはエイヌァルという表記がいちばん適しているように思われる。
─やりすぎ。つーかTシャツ汚れた。
すいません。客の服が汚れることは悲しいことだ。しかし、1.キャストは汚物と戯れたい。2.臨場感、迫力を出すため、客とキャストの距離は近くありたい。という条件を満たそうとするとそういう事態がどうしても起こってしまう。別に昔のパンクみたいに客に汚物をぶちまけてコミュニケーションをはかろうとは思っていないのよ。
─(前略)照明と音響を少し何とかして欲しいです。金取ってる以上は。(勤務医 朝霞市)
これも耳が痛い。照明と音響にかける費用は5万くらい。これは異例の少なさだ。今回は電飾と照明がせめぎあうディスコシーンもないため、照明はいつもにもまして地味だったかも。音響に至っては全てご家庭用の機材で間に合わせている。いわゆるプロはいない。相模原市のリサイクルセンター(このリサイクルセンターが強烈。いずれ触れたい。)で2000円で購入したスピーカー。確かにヒドい。しかし、ロマンチシズムを盛り上げる色照明やらつまんないと思うし、プロの音響屋と小劇場の相性の悪さもあちこちで経験していて、なかなかこの問題の解決は難しいと思う。
─物があたっていたかったです。(アルバイト 江東区)
すいません。
─暑かった。(大田区)
お客様には快適な環境で観て貰いたいとはいつも思っている。これがいつも失敗する。無造作に敷いた段ボールの上に座らせたり、座布団も出さなかったり、工事現場の足場板にパンチを巻き付けた物が客席だったり本当に申し訳ないです。今回も9月末の公演ということで甘くみてました。しのぎやすい気候だろうと思ってました。
─小動物を殺すと嫁の来てがねえぞ。(中略)まちがいないく青年団の対局を担う存在になれる。(苦情受付 練馬区)
ネズミ殺しについては反応が多かった。青年団は一度は観てみたいと思っています。静かな演劇─いいですね。ゴキブリコンビナート以外は全て静かな演劇になれ!
─ねずみが圧死したのは許せません。ねずみは生き物ですよ。(看護士 世田谷区)
ネズミは殺すところを見せるために出したのではなく、精神異常者を責めるネタとして出した。しかし、結果的に踏みつぶされてしまった。いままでいろんな動物(猫、犬、ウサギ)を出してきたが、殺してしまったのは初めてだ。犬や猫と違ってネズミには感情移入の余地がないので(近くでみると可愛いが)気分的には平気だった。でも、客は平気ではなかった。たかが娯楽の為に殺生をしていいのか。この件に関してはもっといろいろ考えたい。
─ここまでやるとひく。爽快感も少しあったけど。ストーリーもダンスもチープだった。あのグロテスクなとこしか残らなかった。(学生 世田谷区)
チープでペラペラで深みがないのは演出意図です。考えさせる演劇ではなく体感させる演劇を抽象的なパフォーマンスではなくやるには全てがステレオタイプをなぞらなくてはならないというのが私の演劇論の全てです。あなたは梶原一騎の漫画はお嫌いですか?赤いシリーズみたいな大映テレビドラマがお嫌いですか?私は大好きです。ご都合主義も大好きです。
─音楽(歌)がこれまで見たなかで一番良くはまっていた。でもこんなに楽しんでいるお客さん(俺もそのひとりだけど)を見ると、世の中狂っているんじゃないかと思ってしまう。(江戸川区)
音楽に関しては今回、オリジナル(作、編曲)の占める割合がいままで一番大きいのでこの感想は正直嬉しいです。世の中狂っているんじゃないかという意見ですが、確かにそれも一理ありますが、ZARDや19が売れているのを見ると別な意味で世の中狂っていると思ってしまいます。我が劇団の客の方が全然健康的なのではないでしょうか。
─将来、このクソ国家の支配者階級となるクソ頭狂大学生として Dr.エクアドル氏の気概に感銘を受けました。(学生 品川区)
大丈夫なんでしょうか。「クソ頭狂大」の何学部かは知りませんが、私達の芝居を見てIQが30ぐらい落ちて、国家公務員上級試験も受けられない脳ミソになってしまわないか非常に心配です。「クソ国家」の屋台骨を支える重要な人材が我々のようなとるに足りない連中のせいでスポイルされてしまうのだとしたら考えものです。
─もっと1コ1コをコンパクトに、スピード感があった方が面白いと思うけど、このだらだらしたヌルさが判んないならオマエなんかもう来んなって感じでしょうか。(左官工寄り 品川区)
だらだらしたヌルさを売りにしているつもりはありません。あなたの意見は正しい。全ては演出家にしてプロデューサーである私(Dr.エクアドル)の仕切の甘さが原因です。よく、段取りの悪さが指摘させますが、あれもやりたい、これもやりたいと、自分の力量を考えずに欲張ってしまった結果がこれなのです。舞台監督や製作を立てれば済むという問題ではもちろんありません。物量の処理が通常の演劇の手法を修得することでは対処できないので自分なりのやり方を一歩一歩編み出していく他ないのです。それでも初期よりだいぶテンポも仕切も良くなってきたというとびっくりされるのではないでしょうか。本当なのです。
─ここまでしなければ人を楽しませる事が出来ないのか。またここまでしなければ楽しむ事が出来ないのか。他にやる事があるだろうに。
一瞬、褒めてくれてるのかとも思いました。私はよくこういう褒め方をするので・・・「他にやる事」があなたにとって何を指すのか非常に興味がもたれるところです。ちなみに私が芝居以外でやる事といえば「ゲームセンターにいくこと」「オナニーすること」「週間漫画雑誌を読むこと」「テレビの歌番組を見ること」どれも私にとってとても充実した楽しい時間です。ただ、そこに「他人」はありません。このような演劇をやる事だけが他人に対しての働きかけがある時間となっています。だから何だといわれても困りますが。ちなみに職場とかでの人間関係は苦痛でしかありません(その苦痛への慰謝料として給料を貰う)。今に他人に対しての働きかけなんてどうでもいいと思える境地に達するかもしれません。そしたら、芝居はやめ、前記のような娯楽に没頭する静かな日々を過ごすでしょう。もちろん、全く違うタイプの芝居を楽しくもないのに我慢してやるつもりはありません。自分の劇団を作る前、役者修行の時期に百万ドル劇場という劇団に出たりしました。毒のない、心温まる芝居をやってました。役者修行としてはそれなりに勉強にもなり、楽しかったです。内容面には目をつぶりつつやってました。自分が呼んだ客がどう思うか考えると辛かったです。あの時期に今更もどるつもりはありません。
─中途半端に社会風刺的な物があってよかった。(魚市場の人)
中途半端な社会風刺って・・・いいもんなんでしょうか。社会の矛盾を盛り込みたいとはいつも思っております。それは、人間自他のどうしょうもない面が反映されているかも知れないと思うからです。モラル自体の有効性を疑ってみたいと思うからです。正義の味方として、社会の様々な悪に怒ってみたりする偽善者的ポーズとは逆の立場にあります。
─訴えたいことが伝わらない。汚すぎて。(サラリーマン 大田区)
うーん。私たちの訴えたい事を汚くなく伝えるにはどうしたらいいんだろうか・・・
─下品で笑えて楽しかったが、セリフ自体をもうすこしセンスフルにしてもいいのでは(学生 藤沢市)
うーん。センスフルなセリフ・・・わからない。「下品で笑える」いわばsenseless=out of sense な内容にかみ合うセンスフルなセリフがどういう物なのか・・・すいません。分かりません。ちなみに川勝正幸氏の提唱する「悪趣味の良趣味」みたいなイヤミなものを私は認めない。
─ネコにネズミを食わせたら良かったのに。
鋭い!これは準備段階でそういう声は確かにあった。しかし、実現しなかったので悔しいと思っていた。そこを突かれると痛い。でも、あの子猫じゃ逆にネズミに食われてしまうだろう。
─彼氏を誘って見に来ればよかったなあというカンジです。
次回は彼氏を誘って見に来て下さい。デートに最適です。ゲルディスコの時、プロデューサー業の人に「別れたい女と来るのに丁度いい」とか言われたけど・・・そんなこと言わないで!
─拍手がないのは珍しい。(板金工 国立市)
いつもないんです。なんなんでしょうかねえ。
─天井がこわれたような気がしたんですが・・・(苦学生 富士見市)
気のせいです。
─ここはいつも客層がヘン。なんかみんなヘン。まともな職の人いなそう。(世田谷区)
本当ですか?
─野郎の裸は見とーないね。(中略)SMはまだまだ甘い。浣腸しないと(無理)
私も出来れば野郎の裸は見たくないです。でも、なぜかこうなってしまう。宇宙企画の金沢文子が出てるビデオでも借りて勝手に口直しして下さい。
SMはわざとしょぼい顔責め、言葉責めみたいのを採用しました。理由は馬鹿馬鹿しくておかしいと思ったから。浣腸は無理とは思ってません。別な劇団はやってたみたいだし。しかし、浣腸をやってしまうと、アナル栓でウンコ我慢の強制「まだ、出しちゃだめだ!」→ウンコの大噴出までやらないとお客様は満足しないでしょう。それ、観たいですか。当然至近距離でやると思いますが、ゲリの飛沫を浴びて平気ですか。私にはそこまでの勇気はありません。でも、志摩ビデオが私の青春であることには変わりはありません。
─中途半端だ。ゲテ系してハイレグの方がよっぽど上。で、おもしろい。間が最悪なのでどうにかすれ。
ハイレグジーザスという劇団を私はみたことはありませんが、別物として確固たる物を築きあげてないからこういう感想が出てきてしまうのでしょう。比較されたりしてしまうのでしょう。大いに反省すべき点ではあります。もっと頑張らなくては。「○○劇団とタメを張る」と言われるのではなく、「比較すべき劇団など存在しない」と言われるために。
─人間は誰もがこうなる要素を持っている。たまたま平和な恵まれた日本のこの時代に生まれ、育ったからこそそれをバカバカしいと笑うことができるのだろう。そもそもこの世は地獄みたいなものだ。必ず老いて死ぬという運命を背負っているのだから。狂いましたね、おめでとう。狂ってしまえば大丈夫。そのとおり。しかし、あなた方は大丈夫ではないはず。狂えず、これを伝えようと演じているのだから。
ありがとうございます。
─んーbeautiful(つづりはてきたう)!!!!!!!!♀!!!!!!!!!んー役者さんの演技も熱ければ、劇場の室温も熱いし、客の熱気も上がって行けば、金玉の皮も厚いですね!!ムンムンムンムンあ〜ムーミン!!ベリーナイスでございマッスルパワー!!がんばって下さい!!また見ます!!ポルトガル語で「愛してる」をエウチアモといいます。(豆知識)(パートタイマー 船橋市)
・・・ありがとうございます。
─私の右前に座ってた文学少女がそのまま育った熟女って感じの人は、ずっと不機嫌そうで、あげくうっすら泣いていて“ヘドロ”出現でダッシュで帰ってました。
この「文学少女」はその後受付ロビーでずっと泣きじゃくっていて、受付の女性スタッフやスタンバイ中のキャストをビビらせていた。確かに本人にはかわいそうなことをしたが・・・
─良質の芝居を10回みたら、11回目にはみたくなるようなクセのある芝居だった。次回みるためにも、よい芝居をたくさんみにいってきます。
いい感想です。嬉しいです。劇団四季の「ライオンキング」おもしろそうですねえ。
─どんな小さな動物でも、舞台で死なれたら絶対それにはかなわないですね。道徳的な意味ではなく、舞台で死ぬような生き物をあつかうのはむずかしいものです。
これを書いてるのは、なんと耽美と少女趣味の過激な融合でポストロマンチカ最右翼と目されている指輪ホテルの人だ。なんとゲルディスコも観に来ている。筆者は友達(ギュンツというダンスグループの都築ちゃん)のオッパイを拝ませて貰うために(嘘)3度この劇団の公演に足を運んだ。そこで学んだことは女性側が自ら提示するヌード(女体)は男性原理のエロを触発しないということだ。すると、男性原理によるエロはどうなるかというと必然的にセクハラ(抑圧と差別)を内在し、恋愛の結果としての平和で愛情に満ちたセックスなどまやかしだということになる。そいつは大変だ。だが、それは男性一般の問題ではなく、私個人の性癖の問題なのかも・・・そんな難しいことを考えさせるパフォーマンスだった。観に来てくれるのはとても嬉しいのでまた、招待券を送るとは思うが、くれぐれも我々の公演を見すぎてヨーロッパ風美学の似合わない庶民的なキャラクターにならないことを強く望む。ゴキブリ女優みたいに口から吉野屋牛丼の臭いをまき散らすような女にならないでくれ!ああいう路線でやることは今、すごく貴重だと思うので。
─力が爆発してますけど、たぶんもうみることはないでしょう。一回みれなおなかいっぱいでしょう。でもこれにエラそうに批判する人はバカげています。あつくなければ最高でした。人にすすめます。1度は観るべきでしょう。ただ、2回、3回となるとどうでしょう。みなさんおもいっきりやってください。応エンしております。
これも嬉しい関わり方だ。若い頃、ホワイトハウスというノイズバンドが好きだった。「音楽は何を聴くの」と聴かれて「ホワイトハウス」と、答えていた。だが、今思い出すと、1枚のレコードを2〜3回しか聴いていなかった。1回聴いて、「こりゃすげえ。やっぱホワイトハウスは最高だ」とつぶやいて、それっきり半年くらい聴かなかったりした。他の適当に好きなバンドは繰り返し聴いていた。でもいちばん好きなバンドはホワイトハウスだった。(正確にはバンドではない)そういう関わり方があってもいい。すると、ゴキブリコンビナートってホワイトハウス並?いや、そんなにすごくはないだろう・・・まだ・・・
─Fuck Me(溶接工 新宿区)
ゴキブリコンビナート一本目は神楽坂ディ・プラッツで行われた。ちょうどディ・プラッツ移転の時期で、水と花火の使用について小屋主の真壁氏と衝突。「舞台監督も立てずになんだ」と怒られる我々。苦々しい敵対感を残して公演は終了。未だに舞台監督を持たない我々は当分ディ・プラッツでは出来ないだろう。このアンケートを書いてくれたのはディ・プラッツ関係者らしい。ファック・ミーとはどういう意味か。
─めちゃくちゃ。分かんない。
どう考えても褒めてるようには思えない文。でも住所を書いている。本当にDM送っていいの?実はこういうお客さんは多い。
─先日、欽ちゃん劇団出身のAV女優とセックスしました。個人的には前回の方が好きです。(プチブル 武蔵野市)
この人は15年ほど前ファンだった今はなき劇団、パノラマ歓喜団の座長さんだ。今はAV男優さんらしい。友達になりたいのだが、ただ会っても話す事がなかったりしそうで恐い。
─人のはだかはもっと美しい。いつもはだかを見せているけど、うっとうしく感じる。なんとか生の血を見せないやりかたはないのか。わからず、残らない。
ダビデ像の如くに鍛えられた肉体。そのような物を見せればこの人は満足するのだろうか。寺山修司はそれをやった。元天井桟敷の役者達は今でもムキムキだ(日野利彦氏を除く)。また、ムキムキというのとは違うが、テクノ暗黒舞踏集団サルバニラの裸も美しい。一度ゴキブリコンビナート名義で客演した。客の反応は最悪だった。アンケートには「ゴキブリコンビナートはいらない」と書かれまくった。「ゴキブリコンビナートのところがおもしろかった」という意見が一通だけあって喜んだが・・・・知り合いだった。
以上。