no.68 長渕氏怒りのアフガン(02.5.25)
長渕って本気でああなのか、それとも割り切ってああいうキャラを(職業として)演じているのか、謎だよな。もしかしたらふざけているだけかも知れない。だとしたら結構なセンスだよな。
ファンはもちろんふざけてない筈なんだけど、私を含めてファン以外のみんなが彼をいまいち胡散臭く思う理由は、いつの間にかイメチェンしてたことによる。私が中学生の頃、長渕は最初のヒット曲「順子」をひっさげて登場した。サビの途中で声がオカマのように裏返る純情フォークだ。同時期、似たような感じで堀江淳っていうのも売れていて(こっちの方がオカマ度が高い。男が女の声を真似する時の気持ち悪い声で女が主人公の失恋ソングを歌っていた)、みんな両者をセットで捉えていたと思う。歌うときの声の出し方も歌詞の文体も今とは全く違っていて、異様になよなよしており、長渕と堀江はファン以外には気持ち悪い2人組だった。
その後、2人ともテレビの歌番組に出るほどのヒットは出せず、「当時のニューミュージック界流行りの一発屋」(例:あみん、アラジン、伊丹哲也、名前は忘れた国鉄職員の人、雅夢、五十嵐浩晃、永井龍雲、新八先生、他)として認識された。しかし、しばらくベストテン番組に出るほどのヒットは出さなかったが、地道に活動は続けているようで、クラスにもファンがいた。中学3年の時、人気の教生の先生(割と男前)がやめるときに、リーダー格の女子生徒(学級委員でも何でもないただえらそうにしているだけの女)の発案で、放課後クラス全員が音楽室に集められ、教生の先生を送る会が
とりおこなわれた。教生の先生に何の思い入れもなかった我々男子生徒もなぜか強制参加させられた。おまけに教生の先生へのプレゼントを買うということで学級会による決議もなく強制的にカンパを請求された。ピアノが得意な女の子が伴奏を奏で、女性生徒全員が「乾杯」の大合唱(しかも泣きながら)。意味もなくそれにつきあわされる男子生徒。理不尽な暴力とはこのことか。地獄絵図とはこのことか。どうして、「今日熱がある」とか機転を利かせて帰らなかったのだろう。俺もバカだったな。あのときの地獄(恐らく教生の先生にとっても)は忘れられない。
ってことは「乾杯」はイメチェン前の曲なのか?
とにかく、地道に活動しているらしいというのは何となく知っていたが、気がつくと歌い方もルックスもすごく男臭くヤクザみたいになっており、
チンピラ映画を自分で撮ったりチンピラドラマの主題歌を自分で歌って自分で主演したりして、ファンも矢沢永吉のファンばりの「肩で風切る恐い人たち」の集団になっていた。
忘れられないのは90年の紅白歌合戦だ。あの紅白での長渕は今まで観た紅白の中で個人的にベストシーンだ。生方アナウンサーの都はるみ言い間違え事件よりも、加山雄三の「仮面
ライダー」事件よりも衝撃だった。また、個人的にベスト長渕だとも言える。そういう人は私以外にも多いのではないか?90年はベルリンの壁崩壊の年であり、
ソ連崩壊と共に冷戦終結の記念すべき年であった。それを祝うべくこの年の紅白ではベルリンの崩壊した壁からの生中継というのが企画された。歌い手として選ばれたのが長渕だった。歌う前に熱く能書きを語る長渕、「ドイツさんもアメリカさんも・・・」、酔っぱらったガッツさんを観ているようだった。放送コード的に大丈夫なのかと勝手に不安になった。放送界の良心NHK過去最大の実験だったのではないかと思われる。
どうも長渕氏は政治意識も高いようだ。世界平和を祈っておられるようだ。ちょっと気にならないこともないよねえ。
イスラム過激派勢力によるテロが起こり、アメリカによるアフガニスタンへの報復攻撃が行われた。「平和」という近代主義イデオロギーの形成に重要な役割を果
たした筈のキリスト教の勢力が世論に強力な支配力を持つアメリカの国民もなぜか戦争は大好きなようで、殆どのアメリカ人はこの攻撃を支持しているらしい。別
口?いや、キリスト教だからこそ。いや、キリスト教に限らず平和主義をお題目に掲げる宗教の本質なんてきっとそんなもんだ。
そして、長渕氏もいよいよこの状況に立ち上がった。 新曲の題名は「静かなるアフガン」。題名を聞いて吹きだしてしまい、つい買ってしまったよ。「ああ、早くアフガンの大地に平和と緑よ やどってくれ!」本気っすか?本気なんだろうね。まあ、間違ったことを言っているわけではない。平和主義、正しいと思うよ。うん。
でも、長渕のファンって天皇が死にそうになると記帳とか積極的に行きそうなイメージあるな。あ、これはあくまでイメージなので。根拠はありません。別
に。
湾岸戦争の時にも「重油まみれの水鳥」みたいなのにすぐ反応するメンタリティみたいなのがあって、こういうのってすごく脆いと思うし、効力ないと思うし、むしろそういうメンタリティに流されて社会が変わっていくとしたら非常に危険なことのような気もする。でも、その危険と脆さを論証するのは私の役目ではない。だから、今のは言わなかったことにしてくれ。私の立場はこうだ。
いま、手許にあるジャケット。ジャーンとかっこよくエレキをかき鳴らすポーズの長渕。題名に「静かなるアフガン」。いいぞ。長渕。面
白いからもっとやれ。