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レーベルGIZAは斜陽のBE−INGを救えるか?(00.7.2)

 かつてBE−INGの時代というものが確かにあった。J−POPの時代の前の時代だ。90年代前半ぐらい。私はこの時代を邦楽暗黒時代と勝手に名付けている。とても邦楽を聴く気にはなれなかったからだ。実際セールス的にも邦楽は低調だったのではないか。
 この時はやっていたアーティストというと、B’Z、ZARD、WANDS、大黒マキ・・・BE−ING以外ではユーミンやチャゲアスのようなニューミュージック界の残党をドリカムやミスチルといったニューミュージック新勢力が駆逐しつつある(ドリカムやミスチルをニューミュージック呼ばわりすると怒る人たちがいっぱいいそうだが気にしない気にしない・・・)時期だった。
 BE−INGは銀座じゅわいおくちゅーるマキとかいう宝石会社と提携していて深夜テレビを見てるとこのB’Zとかの歌とセットでCMがかかりまくっていた。深夜12時を過ぎるとチャンネルをどこに回しても同じCM・・・恐ろしい時代だった。あれは一体何だったのだろう。ベストセラー「危険な話」の広瀬隆氏によれば、あれは世界を裏で牛耳るド・モルガン家だかロックフェラー家だかのユダヤ大資本が南アフリカのダイヤモンドを日本に売りまくるための(何のために?)恐ろしい陰謀の発現であり、原発の建設とも深い結びつきがあるという。本当かよ!

 そんなBE−INGとはどんなレーベルだったのだろうか。特徴を以下に示す。

1.変なバンド名。

 B’Z、ZARD、WANDS、ZYYG、BAAD・・・何語だか分からないアルファベットの組み合わせ。全く意味不明。実際、意味は特別ないらしい。中でも一番インパクトのあるのは「NEW CINEMA 蜥蜴」!なんだそりゃ。ここまでくると芸術性すら感じる。

2.匿名的なバンドの個性。

 WANDSはボーカルを含めたメンバー交替を一度やっている。だが、ファンにとってもどうでもいい話だったそうでたいした話題にもならなかった。メンバー交替前後の曲の違いを聴き分けることは、あの近田春男でも不可能だったらしい。誰がやっても一緒なのだ。
 何の情報操作か知らないがアーティスト達はあまりテレビに出ず、メディアの露出が制限されている。タイアップは大好きなくせに。ライブもやらないことが多い。大黒摩季に至っては死亡説、ゴーストシンガー説、そもそも本人などいない説など、いろいろ噂がながれた。(最近はライブを旺盛にやるようになり、本人がちゃんと存在することが確認された)

 サビのフレーズがそのまま題名になることが多く(「さび付いたマシンガンで今を撃ち抜こう」とか)よく考えないで聴けば平易で分かりやすい。よく考えると意味不明だったりするが。
 楽曲のタイプも巷でテクノがはやろうがクラブがはやろうが関係なく十年一日の如き保守的で無個性的なサウンド(T−BOLANとか言って全然T−REXみたいなサウンドじゃねえじゃねえか)に少し励ましの入った詞。そんなところが特徴であろうか。あまり、派手な遊びもしていなく趣味にお金をかけるわけでもない堅実な女子一般職といったファン像が心に浮かぶ。「泣かないで」とか聴いて「うん、私、泣かない!」とか鏡の前で独り言。そんな風景が。本当のところはよく分からないが・・・

 そんなBE−ING系もお茶の間テクノをひっさげた小室哲哉の登場以降、影が薄くなった。沖縄アクターズスクール出身のダンスめちゃうま系、ド派手メイクのビジュアル系ロック、R&B、つんくプロデュースなど次々に派手で面白おかしい連中が登場しヒットチャートの上位を占めるようになり、前ほどには売れなくなってきている。B’Zだけが、出す新曲すべて初登場一位の記録を更新し続けているが・・・もうJ−Pop界にBE−INGの出る幕はない。誰もがそう思っていただろう。WANDSも解散だし・・・

 ところがそこで彗星のようにどこからともなく現れたのが倉木麻衣だ。今年になってから既に4枚のシングルを発表。どれも好セールスを記録している。全米先行デビューの17才。今までのBE−INGにはない少し凝ったアレンジ。誰かに似ている歌い方、曲調。中途半端なダンスミュージック的アプローチ。
 そう、斜陽のBE−INGがとった苦肉の策は宇多田ヒカルの猿マネだったのだ。全米先行デビューも宇多田にプロフィールまで似せるために仕立て上げたことだろう。ディルアングレイのインディーズ活動が大手音楽事務所の戦略だったように。もちろん、倉木は宇多田のように帰国子女ですらないのだが。その辺のホイットニー・ヒューストン好きな女子高生をとっつかまえて、宇多田の歌い方をマスターさせ(あるいはもともと声質が似ているのを捜して)、エピソードまで似せるためとりあえず全米デビュー。頭の悪いやり方だ。だが、売れてしまった。
 レベルの低い方向転換第一弾がとりあえず成功したBE−INGは今後どこへ向かうのか。どうでもいい話だが。
 いま、BE−INGはいくつかの小レーベルに分かれて活動している。ZARD、大黒摩季のB−gram、B’Zのroom records、T−BOLANや宇徳敬子のZAIN。そして、倉木が属するGIZA
 GIZAの今までのトップ・ヒットメーカーは小松美歩だった。アニメ「名探偵コナン」のタイアップで売れていたが、このアニメのエンディング・テーマも倉木の担当になってしまった。「コナン」権を奪われてしまった小松美歩。消えるかもしれない。
 GIZAには、他にブリティッシュが少し入ってるような気がするルーマニア・モンテビデオ(変なバンド名だと思ったらやはりBE−INGだった)、エイベックスっぽいダンス・ビートの愛内里菜がいる。まともな音楽ファンは聴かないと思うが、少しはサウンドにリアルタイムな要素を盛り込もうとした形跡がある。これは今までのBE−INGでは考えられないことだ。
 GIZAで巻き返しをはかれるかBE−ING。宇多田ヒカルの猿マネの次に何をやらかしてくれるか、しばらく目が離せない。

 関係ないけど、「踊るポンポコリン」もBE−INGだったのね。♪ピーヒャラピーヒャラ・・・


R&Bを極めるコーナーB(00.7.2)

R&Bをいろいろ聴いてきて分かったことは一口にR&Bといってもピンからキリまであるというのが事実だ。そういうわけで、知ってる範囲でこんな表を作ってみた。

横軸はオシャレ度を表している。右端のハイソ(サブカル)はREMIX系とか呼んでもいい。R&B呼ばわりされることを実は嫌う。JAZZの要素が濃い。ワイヨリカやバードをプロデュースする大沢伸一はモンドグロッソ。渋谷系の残党だ。クール・スプーンや京都ジャズマッシブ、UFOなどと共にかっこいいJAZZの代表格だった。UA,ACO,CHARAはテクノやら昭和歌謡やらブラジル音楽やら黒人音楽にこだわらないサウンドづくりになっていて、確かにR&Bの枠でくくりきれない活動をしている。左端の「庶民」に近づくほど、保守的なサウンドになる。ホイットニー・ヒューストンやマライヤ・キャリー的なブラコン、場合によってはセリーヌ・ディオンみたいなただの歌い上げバラードに近づいていく。ヤンキーと言い換えてもいい。かつてヤンキーと呼ばれた層が、今はクラブにも行く。

そんな時代だ。


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