ま、まさか復刊されるなんて!!驚いた。一度ちゃんと読もうと思っていた。古本
屋めぐりで丹念に単行本を一冊一冊集めていくしかないと思っていた。そういう作業
は、前にもやったことがある。「アストロ球団」が絶版だった頃、どうしても読みた
くて、古本屋の店頭の100円コーナーみたいなところを一生懸命見て回った。それ
でも後半部分がなかなか揃えられなかったが、太田出版様が再版してくれたので、全
貌をつかむことがやっと出来た。太田出版様万歳!ついでにその太田出版様が出して
おられるクイックジャパンも万歳!(ゴキブリコンビナートをカラーで取り上げてく
れるなんて、何て素敵な雑誌なんでしょう!クイックジャパン大好き!誓います!も
う、二度と貴誌の悪口はいいません!)「アストロ球団」は、連載後ずっと語り継が
れてきた伝説のマンガなので、再版も納得できる。しかし、あのマンガがどこで伝説
になっていたというんだ!
10年近く前、「グランドチャンピオン」という雑誌があった。もう、誰も覚えてい
ないだろう。「少年チャンピオン」の姉妹誌で、コンビニとかでちゃんと買えたが、
売れなくてすぐ廃刊になった青年誌だ。どうしてそんなショボイ雑誌を毎号読んでい
たかというと、山野一先生の「カリ・ユガ」が載っていたからだ。当時、エロ本でも
マニア誌でもない普通の青年誌に山野一作品が載るなんてとんでもないことだった。
当然読者からの不評からかクレームからか、「カリ・ユガ」は7週間ぐらいで打ちき
りになってしまった。週刊誌自体の廃刊を待たずに。(その後、山野先生は「コミッ
クスコラ」で「どぶさらい劇場」を連載することになるが、これはちゃんと廃刊まで
持った。)毎号「カリ・ユガ」を目当てに買っていたが、買っているうちにもう一つ
楽しみにするマンガが出来た。それが、狩撫麻礼原作、いましろたかし画の「ハード
コア」だ。
だが、連載中は本気で評価していいものかどうか、判断がつきかねていた。しかし
、雑誌がなくなってから、次第に私の中でその存在が大きくなり、もう一度ちゃんと
読み返したいという気持ちがどんどん高まってきた。しかし、グランドチャンピオン
の単行本などとっくに絶版の筈だ。誰もが忘れてしまった雑誌のたいして話題にもな
らなかった連載。復刊の要望も少なかったのではないか。だから、今回の復刊にはビ
ックリした。復刊のニュースを聞き、すぐに本屋に走った。 狩撫麻礼はメジャーなマンガ原作者だ。知ってる人も多いだろう。君は狩撫麻礼が
好きかい?私は大嫌いだ。彼の作品には気分の悪くなるものが多い。説教臭くて、エ
セヒューマニズムで、とにかくむかつく。「天使派リョウ」とかね。何が「天使派」
だ!いねえよ、そんなヤツ!泥臭いのは基本的に好きだが、そこに中途半端な救いや
癒し効果が入るととたんに嫌いになる。西原の「ぼくんち」とかも嫌いだね。
そういう意味では「ハードコア」は奇跡のようなマンガだ。狩撫お得意の泥臭さが
極限まで突き詰められ、珍しくそれに関して偽善者的な美化が一切ない。とことん華
がない登場人物達。毎回毎回のどんよりした余韻を残して終わる冴えないエピソード
の数々。読んでくとどんどん気が滅入ってくる。そして、なぜか身につまされる。あ
り得ないくらい馬鹿馬鹿しくもしょうもない設定に強力な説得力がある。すばらしい
!すばらしすぎる!読んでいて感動のあまり手が震えてきた。涙が出るかと思った。
マンガを読んでこんなに感動したのは久しぶりだ。
大嫌いな狩撫麻礼に対して、いましろたかしは結構ファンで、「デメキング」とか
単行本も既に数冊持っている。っていうか、「ハードコア」で彼の名前を知り、単行
本を時々買うようになった。狩撫のは買わない。いましろのはどれも面白いし、好き
だが、「ハードコア」のインパクトを越える作品には未だにであっていない。よいマ
ンガ家と悪いマンガ家の出会いで凄い傑作が生まれた不思議な例だ。
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