Dr.エクアドルのJ-POP大好き目次へもどる。


vol.41 全くもって不快な漫画、不快の最高潮に達する!

   さて、前回は「Jポップ大好き」には珍しく素直に感動を表明するポジティブな展開であったが、今回は、その反対で凄く不快な漫画体験について書く。ビッグコミッ クスピリッツは毎号読んでいる。適度に楽しみにしてる連載もあるが、嫌いな漫画も 多い。「最終兵器彼女」とか、「センチメントの季節」とかね。でも、つい買ってし まうので読んでしまう。読んだ後に作者に殺意を覚える。だったら読まなきゃいいの にね。(「よいこ」もいやだなー)。
 ここでとりあげるあの漫画も嫌いなもののうちの一つだ。今までは適度に嫌いな漫 画の一つ程度の存在感だったが、最近最終回が近いのか、クライマックス的な盛り上 がりがあり、ちょっと私なぞの感覚では正気さを疑ってしまうような展開になってきた。そこへ来て今週号(00年51号)。今までの370回(7年あまり?)分を総括するような強力なシーン!いやあ、ビックリした。なんなんだこれは。こんなに漫画を読んでいやな気分になったのは久しぶりだ。
 ここまで、読んだ方でスピリッツ読者の方がいるとすれば、もう大体見当がついた と思う。そう、「東京大学物語」だ。ドラマにもなってるからきっと人気漫画なんだ ろうね。遥ちゃんは瀬戸朝香だったっけ。遥ちゃんの瀬戸朝香にここまでやって欲しかったね。
 この漫画は最初東大を目指す主人公村上直樹と少しトロくてカワイイ感じの水野遥 のラブコメみたいな感じで始まった。ちょっとしたエロがあり、理屈っぽい村上くん が一瞬ともいえる短時間にものすごい量の理屈をこねるところが笑いのポイントだっ た・・・もちろん私は笑わなかったが・・・  この5年以上にも及ぶ連載の中で二人はつきあったり、別 れたりする。後半に行く に従ってセックス描写の内容にしめる割合が高まって、謎のエロ漫画という様相を帯 びてくる。謎というのは、ただ、一途にエロが大好きな作者がひたすら思い入れでエロを描いているというのではなく、といって、悶々としている青年読者を当て込んで 割り切ったサービスしてるというものでもなく、何か作者の中で考えていることがあり、エロを通 して何かを訴えかけようとしているようなそんな感じなのだ。
 漫画内容がセックスだらけになってもヒロインの遥ちゃんは長いこと処女のままだったが、最近ついに村上くんが思いを遂げることとあいなり、ああ、やっと物語も大団円だなという感じになってきた。
 しかし、その辺から、この漫画の変さ、狂気が一気に加速してくる。何週にも及ぶ ファックシーンはひたすら遥ちゃんのアップ。ページをめくってもめくってもあえぎ ながら説教臭い独り言をつぶやく遥ちゃん。次の何週間かは遥ちゃんの子宮内の描写 が延々続く。受精卵が胎児を形成するまでがひたすら描かれる。外で起こっている出来事は子宮内に響く会話として吹き出しのセリフだけで示される。
 そして、久しぶりに外のシーンに場面が戻ると、遥ちゃんは既に腹ボテ、相変わら ずイノセントな表情で正義感めいたたわごとをつぶやき続ける腹ボテの遥ちゃん。村上くんと一緒にどうでもいい理屈をこねながら、妊婦セックス
 そして、今回はついに念願(?)の出産シーン。産婦人科に行くどころか助産婦すら呼ばない遥ちゃん。「生まれるー」と叫びながらの出産直前のセックス。誰にも共感など出来るはずもない謎の道徳観を確認しあいながら産み落とされる胎児。とって つけたように「きもちいい」と叫ぶ遥ちゃん。
 一体これは何なのだろう。そこに流れる思想は何なのだろう。エコロジー?学校解放?学歴社会批判?っつーか何教?あるいはイデオロギーや正義そのものへの悪意に 満ちたパロディ?それならまだ分かる。なぜなら、この作品は結果的にそういう風にしか機能しないだろうからだ。
 遥ちゃんの人物像は明らかに一部の男性の都合のいい理想を具現化したものだし、 何の現実感もない。出産シーンにも何のリアリティもない。ただ、ただ、気持ち悪い 。うわごとのように繰り返される「バースコントロールはダメ」「自然分娩が一番」 「学歴なんて下らない」等のテーゼも何の説得力もないどころか、「その説得力のなさというか、無効さを作者は言いたいのだな」という逆説的説得力すら発揮する。もし、本当にその逆説的説得力が作者の意図ならば作者はまっとうな人間だろう。
 だが、もし、作者が本気なら、この漫画を書いた江川達也という人間は、漫画界ト ップレベルの狂人と言うことになる。精神病院行きは時間の問題だろう。あるいはす でに精神病院で書かれたもの?アール・ブリュ?あるいは、先ほども述べたように、 神を見てしまった系?カルト?漫画家で教祖になる人間もいるからね。「エースをね らえ!」の山本鈴香とか。教祖じゃないけどまんだらけ総店長の古川益三は世界救世教だっけ。「世界人類が平和になりますように」!
 いっそそれならば次号当たりから神への言及とかはっきり出てくるといいね。そう なれば漫画史上の事件だよね。聞いたこともない宗教だったりするのがいいね。江川 達也オリジナルだともっといい。「立正安国論」によると・・・とか始まったりする のもまあ、それはそれで捨てがたいな。遥ちゃんの夢の中に日蓮だか親鸞だかが現れ てありがたいお告げを頂戴するとか、いいんじゃないですか。小学館も心が広いねえ 。
 そういうわけでこの前代未聞の気持ち悪い漫画「東京大学物語」の今後の展開にも 目が離せなくなってきた。どういうオチで締めくくるのか。気になってしょうがない 。読むのは苦痛以外の何者でもないが・・・とりあえず、つっこんでおこう「出産が 気持ちいいなんてことはあり得ません」!「妊婦とセックスできる人間は特別な人間 (妊婦フェチ=かなり高度な変態)です」あと、「人間の自然な欲望と社会的な欲望 を切り離して、どちらかの優位を語ることは出来ません」


Dr.エクアドルのJ-POP大好き目次へもどる。