no.58 ガーディアンガーデン2次審査(01.9.9)
応募が今年じゃなくてよかった。今年だっら落ちてたな。ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開2次審査のことだ。作品発表権を手にしたのは、ひげ太夫、庭劇団ペニノ、ヨーロッパ企画だ。私の周りでは誰もが通
ると思っていたポツドールは落ちてしまった。審査員が変わり、選択のテイストが変わってしまった。すなわち保守化だ。サブカルは嫌いだが、だからといってエンターテイメントの概念を何ら拡張しない、表現において何ら冒険心を持たない団体が選ばれると、少し寂しくなる。普通
の演劇賞と一緒になってしまった。オーソドックスな演劇のタイプとは違っても、ちょっと変なことやってても、そこに今までにない可能性を見いだし、それなりに演劇界の話題となる劇団(我々以外)を排出してきたガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルは静かにその役割を終えたのだろうか。これからはパル多摩しかないのだろうか。
さて、えんげきのぺーじにならって個々の劇団のプレゼンの感想を述べてみることにしよう。関係者のみなさん、私が何を言ってもあなた方の発展になんら緩衝するはずもないので、気にしないで下さいね。
1.ベリィギャルド
なんの準備が出来てないことをみんなで謝るという導入のアイディアは結構好き。っていうか、我々もやりそ、こういう導入。だが、我々なら、謝っていると、客席から「いいんだよ。そんなに謝らなくてもいいんだよ」と思いあまった客(サクラ)が乱入、「ここでくじけたら、アカン」とか言って主宰の母が乱入、そこで主宰と一緒に謝っていた女優で実は主宰の彼女がそれに反応等、様々な人間関係のありようが示され、なし崩し的に臭いドラマに突入、感極まったところで歌って感じになるだろう。だが、彼らはそうしない(歌も歌うが別
に感極まらない)。ゴキブリコンビナートではないから。つーか、そんな風にやられると逆に困るけどね。松尾リスペクターごときに。
2.ひげ太夫
チャンバラとかやる連中嫌いなので、観る前はそういう色で観ていて、全く期待してなかったが、実際観ると秀逸!個人的には一番好きな集団であった。「ひげ」で「女だけ」で「京劇」で「アイヌみたいな服」でよくわからない組み合わせ。本人達も言葉でその組み合わせの必然性を説明出来ないだろう。でも、何故かやりたくてやってしまう。すると何故か変な説得力をもってしまう。我々もそんな感じでやっていたい。だれてるようでテンションが維持されている変な時間の流れ方も親近感を感じる。
3.ポツドール
やはり、女をいびって泣かすのっていいよね。ぐっとくるね。傑作「騎士クラブ」みたいにはっきりとセクハラじゃないのでチンポは勃たなかったけどね。ちなみに泣かした女を犯すのが私にとってのセックスの理想型だ。恋愛という形ではなかなか実現できないので悲しい。
4.ヨーロッパ企画
うまい。ちゃんと笑える。80ムニエル(本人以外意味不明)!こんな正当派で笑えるなんて。でも、ネタも微妙なとこついてるし、しかもちゃんと引き込まれる形で料理しているね。21才でここまでやるなんて確かにすごいことかも。でも、こんなみんな椅子に座ったままでしゃべってるだけで、景色の変化しない地味な芝居をみるために劇場に電車とか乗って行く気はしないね。空間を使って何か総合芸術的なことが起こるってわけじゃないからね。こたつでみかんでも食いながら観てればいいタイプの芝居だね。
5.町奴
ストーリーがわからなかった。前衛表現?。中国語弁士と白塗りダンサーと維新派風少女との関係が最後までわからなかった。その割りに新劇発声。のどの奥をわざと絞り出して鼻腔に響かすやつだ。うざい。新劇発声うざいよ。今回見た中で2番目に難解だった。肉体労働者向けじゃないな。
6.フランケンシュタイナー
えーと、どんなんだっけ。おもいだせないな。あ、車にひかれたやつだ。「ラフな翻訳劇」とか言ってるけど、全然ラフじゃねえよ。手振りと発声がガチガチ型にはまってんじゃんよ。カジュアル感ゼロじゃんよ。「じゃんよ」とか台本に書いてみろ!「おっかあ」じゃなくてよ。自分の言葉で台本書けっつうの。自分の生活感情を盛り込めってつうの。普通
に声出せっつうの。
でも、ブレヒトとかチェホフとか読む人ってすごいね。私は青春時代ピンチョンにもジョイスにもプルーストにも挫折し、「(文学に俺は)♪向いてな〜い」と結論したので、もうそういうのは読まない。
7.毛皮族
話によると、本公演はもっと面白いらしい。プレゼンは失敗らしい。この人達って指輪ホテル人脈?っていうと耽美?ビスチエとかガーターベルトとかで踊るの?プレゼンはフリントストーンみたいな原始人ファッション。下穿きは黒スパッツ。まあ、どうでもいいけど。小娘のメンタリティに興味はねえんだよ。とくにガングロより自分が偉いとか思ってる女は嫌いだね。
チラシによると次回公演はゴキブリコンビナートのセロトニン瘍子が客演するらしい。劇団員の誰かしら観に行くだろうから、一応どんなのだったか聞くことにしよう。
8. a.C.m.e.
多分ストーリーはあるんだと思う。しかもそんな複雑でないのが。でも、演劇的構成によって単純なストーリーが分からなくなってしまう格好の例だ。北陸とかを感じさせるもっさりちゃんが主役。なんか部活って感じ。スライドとか使ってたな。劇団名とか格好良くスライドで出すの未だにやってる人たちいるけど、なんでやるんだろ。終わってんのに。
9. 庭劇団ペニノ
今回見た中で一番難解だった。学生服で白塗りの男が出てきたり、畳をしいてたり、車椅子にいざりがのってたり、寺山修司やら江戸川乱歩やら丸尾末広やらのグロ耽美な路線なのかなと一瞬思うが、観てると全然関係ないようだ。じゃあ、関係なくて一体何なのかというと、さっぱり分からない。いざりだと思っていた人が突然手足が復帰したり、よくわからない。映像もよく分からない。何も分からない。例によって狐につままれたような気分で発表が終わる。きっと私には全く理解の出来ない高度なことをやっているのだろう。でも満場一致で合格。審査員ってすごいんだね。「可愛いことをやろうとしてるんです」というさらに謎な発言をする主宰者。ニコニコしてるけど顔がすごくコワイ。審査員への返答で顎で答える主宰者。ニコニコしながら。コワいよう。とにかく全てが謎だった。こういうのをコアな演劇というのだろうか。
10.アニュータ
吊りズボンした人が「チェホフ」とか言ってると「ああ、あるあるこういうの」って思っちゃう。あるよねえ。でも、よく知らない。そういう世界にいないから。私はロンドンブーツを履いた人のロックを聞かず、ベレー帽かぶった人の絵を見ないように、吊りズボンはいた人の芝居は観ない。あ、あくまで結果
的にそうなってるだけで、もちろん、ファッションを基準に選んでるわけじゃないよ。ここも演技うまいね。でも、他のとこみたいに声色発声やあり得ない身振りとかないので、ウザくない。テレビドラマを観てるようにナチュラルに入ってくるね。内容はどうでもいい。
審査も結構面白かったね。でも、やはりよく分かんない審査員達だった。そもそも1人は「小劇場などよく知らない」といい(つまり、興味はないってことか)、1人は「私はアイディアより技術面 を重視する」といい(じゃあ、文学座や円がエントリーしてくれば文句なしに合格なのか)、1人は小劇場出身だが近代劇じゃないしで、まず、小劇場演劇という場を演出家の卵と役者の卵達による発表会だと思っているようだ。そうじゃないだろう。インディーズ音楽やインディーズ映画と同じように、大手の商業的な場では出来ない試みを行う場なのであり、独自の価値観をうち立てなくてはならない筈なのだ。そういう風に考えると例えばひげ太夫やペニノはまだいいとしても、ヨーロッパ企画はないだろうという気がしてくるし、他にもっといいとこがあるだろうという気がしてくる。でも・・・そこまで書いて自信がなくなってきた。もしかしたら小劇場演劇とは「卵達の発表会」の場なのかもしれない。私の方が勘違いしているのかも知れない。ときどき観に行く他の劇団の公演や自分らの芝居についての評判とか思い返すと・・・自信がなくなってきた・・・