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no.59  三木道三(01.9.9)

 公演準備期間中は「Jポップ大好き」休んでたし、公演終了後も数週間だらだらと過ごして休んでたし、先々週ぐらいから更新作業始めたけど、漫画ネタとかだったしで、久々のJポップネタだ。記念すべき復帰第一弾はやはり三木道三!やはり、彼について何も語らないわけにはいくまい。Dr.エクアドルとして。ゴキブリコンビナート代表として。このコラムを読んでくれている人、ゴキブリコンビナートの芝居を観に来てくれる人の中で、三木道三が全く気にならないなんていう人は1人もいるまい。そして、素直に胸を張って「三木道三好き」と言える人もなかなかいないのではないだろうか。平井堅やダ・パンプを好きになるのはわりとたやすい。しかし、三木道三を好きになる境地ってのはさらにレベルが高い。
 三木道三の何が気になるのかいろいろ考えたが、「レゲエがこんな風にちゃんと売れるのは珍しい」「プロモがユニーク(オッパイと赤ちゃんと風呂)」「関西弁」とかいろいろあるのだが、結局次の2点が重要だという結論に達した。すなわち

 1. 顔がコワイ。
 2. 詞がヘン。

  なんだ、何も考えてないに等しい結論じゃん。第一印象じゃん。でも、まあそんなところだ。そして、この特徴はJヒップホップに関してもかなり当てはまるものだ。みんな顔がコワイし、詞がヘンだ。
  1.の「顔がコワイ」をさらに深く掘り下げると、「あまり難しい本とか読んでなくて、喧嘩が強そう」ってことだ。「元族でいま左官の若親方」って感じの顔だ。そして、強烈に和顔っていうかアジアな顔だ。なんか、「若いやすし」って感じ?なんでみんなそうなんだろうね。
 そして、詞だ。サビの「いっしょういっしょにいてくれや〜みてくれや・・・みてくれや」の韻も相当頭にこびりついて離れない印象深いものだが、全体を通 して流れる単に「ほのぼのしてる」という形容ではすまされない強力なコンサバ感。これが重要だ。巷のラブソングですぐに「この愛を永遠に〜」とか歌うけど、それは、「量 的永遠」ではなく「質的永遠」ってやつで、はかない一瞬に永遠的なものを感じてしまうってやつで、実は恋愛自体を一過性のものとしてとらえているものが殆どだと思う。「恋は危険なゲームであり、アバンチュールであり、彼氏彼女は連れ歩いて周りに自慢するアクセサリー程度のもの」みたいなノリが若者達の間で蔓延する中でこの反動的価値観はスゴイ。「介護」とかいってるし。嫁だね嫁。嫁に来いって感じだね。「関白宣言」を超えたね。
 それでいて「一緒に料理したり」とか、「結婚なんてわからん」とかも言ってて単に保守派と決めつけられない一筋縄ではいかない面 もある。男気強そうなわりに性役割に関しては否定派なようだね。「この保守性は既成の制度への従順さなのではなく、もっと人間本来のナチュラルなもの」ってアピールになっていて、その辺がまたエグさを際だたせる。
 そこでまた私は「ヤンキーってワイルドだけど、実は価値観はすごい保守的」という真実に思いを馳せてしまう。不良は実はアナーキストでもアウトローでもないのだ。実際若いうちにすぐ結婚とかするしね。子供とかつくるの大好きだしね。子供とか出来るとすぐワルをやめる。でも、子供も間違いなくヤンキー化するんだけど。親への反抗っていったって実は愛情の裏返しっていうか甘えだしね。親を殺したりする人たちは普段から外で暴れたりする人たちとは別 種の人たちだ。そして、彼らはもちろん社会不適応者でもない。むしろ、エリート以上に社会にとって安全な駒なのではないか。ヤンキーとか不良とか呼ばれる人たちとは人生のどの時期のどの局面 で羽目を外し、どこでまじめになれば社会と自分との間で安定した関係を保てるかきちんと対応できる器用で頭の回転の速い人たちのことなのではないかと私は常々思ってきたが、この歌に示された「元族で今左官の若親方の価値観」にますますその思いを強固にするのだ。
 だからといって、ヤンキーはバカだから疑うことを知らなくて、インテリと呼ばれる人たちこそ本当の意味で「疑う」ことを知っているだなんて、これっぽっちも思ってないけどね。「疑う」ってことに関しては、ヤンキーもインテリも同レベルだと思う。じゃあ、誰が疑える偉い人なのかというと、疑うことが偉いとすら私は思っていない。疑うってのは何か本質的な不幸に出会った場合にのみ起こる現象のような気がするから。
 話がそれちゃったかな。要するにこの歌の魅力は「ヤンキーの結構まじめな部分」がかいま見れるところにあるってことだ。あ、三木道三は、ジブラみたいに「自分がワルだ」なんて一言も言ってないんだっけ。ごめんネ、決めつけて。あまり気にしないでね。
 学校でいじめとか率先してやってるヤツが実は家では病気持ちの肉親の面倒を見てるいいヤツって「報復ファンタジア」だな。不良ってそういうところあるような気がしたんだな。だから、ヤンキーのまじめさも実は結構あやしいもんなんだけどね。ビックリするほど若い年に結婚するけどじゃあ、それから年とるまで、毎日寄り道しないで家に早く帰るかと言うと、そんなことないしね。「お前が全て」とか言いながら酒飲むたびに殴ってそうだしね(言い過ぎ?)。でも、さんざん殴っといて、介護は本当にちゃんとするとか。なんか嫌がる職場の新人に酒をおごったりするアツいやつらの本質を顧みない強引な価値観をここでは堪能すべきなんだろうね。
 さて、「リスペクト フォー ライフタイム」以外にも何枚か今回聴いてみた。「斬る!ジャパニーズ」と「太陽/月光」だ。「斬る!ジャパニーズ」(斬られたくねえ!)は、何か政治的なことを歌っているようだがダジャレばっかり(韻)だとまじめなことを言ってる気がしないね。「ついて参れ一億二千万!」とか言われても困っちゃうね。でも「毒入り食料 買ってはいけない!」とか言ってて面 白い。読んだんだね。「太陽」でも「ご先祖様お天道様に誇れるように」(「太陽/月光」)とか、いいこと言ってるう!


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