no.96 がんばれ美意識! (04.11.05)
今年の春に「KERA」なんて雑誌の取材を受けたんだけど、その時その雑誌のことを知らなくて、訊けばゴスロリ少女が読む雑誌だという。まあ取材が来たのは、10年前にバイトで知り合った友達が連載しているからで、ゴスロリ少女がゴキブリコンビナートに大注目!!なわけではない。こちとらあえてあらゆる「美意識」的なものに対立するような創作姿勢なのでそんなことはあり得ないでしょ。連日の肉体労働で風呂も3日ぐらい入ってなく、無精ヒゲも伸び放題、しかも徹夜仕事明けでドロドロの状態で取材へと馳せ参じたので現場に居合わせた編集部の人もかなり引いたのではないでしょうか?
で、掲載紙が届くと、当然音楽欄にどんなJポップが紹介されているのかチェック!さぞかしドーランバッチリ髪型は怒髪天をつくこと3mみたいな常軌を逸したイケメン女装野郎どもが蠢いていることだろうと期待に胸ふくらませてページをめくると
「小西康陽責任編集!ソニー時代のピチカートファイブをもうら」
の見出しが!あれあれそんなはずはと、さらに見ると宇多田ヒカルのニューシングルやらmihimaru
GTやらハスキング ビーやらダンスマンのニューアルバムやらで、全然ゴスじゃねえぞオイ。ビジュアル系占有率が恐ろしく低くてもはや普通
の雑誌の音楽欄と変わらないではないか!
で、話題は突如変わってエロビデオの話になるんだけどこの間「立河みゆって結構かわいいな」と思ったわけでは決してなく、あくまで仕事の参考にするためソフトオンデマンドの「プチ裸出」見たんだけど、立河みゆがいきなり冒頭でコンビニ入り、コンビニ客が行き交う中命令されて全裸になり、フェラ、そしてファックするという前半の重要なヌキどころがあるわけだが、その時の衣装がゴスロリである。もはやゴスロリがエロビデオで普通 に抜けるファッションとして認められていることがわかり、感慨深かったのだ。かつて10年ぐらい前水道橋で用事済ませて駅に着いたらルナシーかなんかが東京ドームでやってて帰り客のゴス少女の何万人という漆黒の人波と合流するハメになり、思わず黒服ちゃん達のルックスチェック!すると来るわ来るわ次々に童話の挿し絵に出てくる魔法使いみたいな装いのブス、ブス、ブス、ブスの隊列。平均レベルを見つけるのも難しい!そう、ああいう黒い服は普通 に恋愛や青春を謳歌できない精神に深い闇を有した心身ワケあり女(しかもヤンキー)が着る服だったのだ。そんな時代を知っているから感慨深いのだよ。マンガとかでも極めて安直なバランス感覚でゴスファッションの女が出てくるよな。TVドラマではまだ見ない。知らないだけか?確実に脱キワモノファッション、お茶の間化が進んでいる。丸の内OL、週末はゴスロリみたいな(本当か?)。
つまり、ゴスファッションは一般化し、浸透し、認知され、逆にかつてゴスに必須アイテムだったビジュアル系ロックは衰退しているということか?まあ、ヒットチャートに今でも顔を少し出すピエロ、ディル・アン・グレイなどはPV見るといまでもゴリゴリのトンガリ美意識(?)健在!そしてガクトはキャラのお茶の間化に成功!だが層は確かに薄くなっているよな。10年前みたいに思春期に突入してゴスロリデビューした女が「さあ、どのビジュアル系聴こう。いろいろあってこまっちゃうな」みたいな隆盛感はない。ゴス少女の脱ビジュアル現象。だからってソニー時代のピチカートファイブ聴く必要ないだろう!もっと研ぎ澄まされた(?)美意識(?)を感じさせるような独自の音楽アイテムを見出して欲しい。ビジュアル系現象はヤンキー文化とオタク文化という日本が世界に誇るそして誇れない若者文化の2大恥を見事に融合したもので、こんな外人に説明できないモノ、是非どんどん外国に進出して欲しいと思っていた。そうしたらきっと馬鹿な外人が真似したりしてニュアンスが変わって逆輸入されたりして面 白いのだ。と、思っていたが、いくつかの進出は不発に終わり、目下風前の灯火である。だが、何かまた恥ずかしい音楽勢力を形成して欲しい。そういうの(外人に恥ずかしくて説明できない日本文化)が俺は大好きなんだ。
ゴスの系譜を遡るとインディーズロック全盛期のトランスレーベルあたりに行き着くか?だが、80年代で言うとノイバウテンなんかどう見てもビジュアル系だし、ニューロマンティックみたいなのも源流っぽい。結局YMOに行き当たるのではないか。テクノファンって黒かった気がする。黒とは言ってもコムデギャルソンの黒だったりするんだけどね。そう、源流をたどるとギンギンの高感度人間にたどり着く。かつてはヤンキー文化ではなかったのだ。恥ずかしいどころか最先端だったのだ。そういえば、脱ビジュアル現象でメンタリティがヤンキーからあのころの不思議ちゃんに戻り始めている気がする。これはよくない兆候だ。センス良くなってどうする。ださいまま、ダメ文化なままでお願いします。
で、そう思っていたら気になるバンドが2つ程現れた。ひとつは陰陽座。なんかダメ劇団みたいなバンド名だが、ビジュアルコンセプトに和風テイストが重視してあり、歌詞には古語満載、曲名は難しい漢字満載でコアな少女マンガの世界にこういうのあるよなって雰囲気。メンバーは黒猫(ボーカル)、瞬火(ボーカル)、招火(ギター)、狩姦(ギター)、斗羅(ドラム)とかっこよく漢字でキメているようで、どう読むかというと「クロネコ」「マタタビ」「マネキ」「カルカン」「トラ」で、ネコ大好きでネコまっしぐらぶりをアピールしているようだが、それでいいのか?!ビジュアル系と違うのはビジュアル系も女装したりしてユニセックスぶりをアピールしていたが、基本的には男集団で基本コンセプトは珍妙なイケメンまたはイケメンもどきが、屈折した美意識の女にモテまくることにあり、モテがキーポイントだったわけだが、こちらはユニセックスといっても実際に女が混ざっている!男女混成である。混成であると思われるのだが、見ると区別 がつかない。 とにかく、ただモテればいいというわけでもないところが従来の怒髪天をついた人たちと決定的に違うようだ。
もう一つも男女混成でALIproject。1988年から活動だから決して新しいバンドではない。もう中年?インディーズデビューだが、キャリア的にも長いのでアニメ音楽やら映画音楽やらCM(キッチンハイター、サロンパス、黄桜、小僧寿しチェーン)やらこなしまくって業界の重鎮なのでは?広告代理店営業マンとかと「○○ちゃーん、シーメに・・・(そういう世界よくわからないので略)」とか言い合って、週末はゴルフ三昧とかそんなライフスタイルかも知れない。だが、ビジュアルは縦ロールバリバリの少女マンガ世界でマリス・ミゼルに本物の女が混ざったって感じ。まだ断片的にしか聴いたことないのでちゃんと聴けるようにもう少し売れて欲しい。テレビでPVもっと見たい(CD買う気はない!)!2003年に出たアルバム「アヴェンジャー」の一曲目のタイトルは「月蝕グランギニョル」!飴屋知水と高取英の合体か?80年代から小劇場を知っている人間には噴飯物!ご飯をかき込めどかき込めど口から音速の勢いで次々ぶちまけて部屋中ご飯の海にしてしまいそうなナイスなタイトル!ナメてるのだろうか?いや、きっと真面 目なんでしょうね。
という具合で、もっと凄まじく面白いのが続々出てきそうな雰囲気で、現時点でも調べればもっとありそうだが、とりあえずオリコンの50位 から100位ぐらいをうろうろしてる中では上記の2バンドが目を引く。どうやらゴス・ビジュ界はモテ道=アイドル路線のモテなきゃダメという中途半端なイケメン戦略の束縛がついえることで、ますます自由奔放に無軌道に魑魅魍魎跋扈する妖怪ワールドの構築に勤しみ始めたようだ。今後の展開に期待しよう。がんばれ、美意識!美意識が元気なほど我々も美意識の死滅した不毛世界の構築に元気よく励めるってもんだ。