今、リアルタイムで一番気になるマンガがもりやまつる氏の「親父」だ。ビッグコミックスペリオール誌に連載中。ビッグコミックスペリオールは、ダメ雑誌だね。柳沢みきおとか星里もちるとか、聖日出夫とか、紫門ふみとか、「スピリッツ」から弾かれた人たちが書いているよ。中途半端なオヤジ雑誌。
「サンデー」を退いた小山ゆうは「あずみ」で一花咲かせたね。「あずみ」も家康が死んで(あずみという少女が殺したことになっている)仲間も師匠の爺も死んでしまい、盛り上がるネタがなくなってしまった。ラオウを倒した後の「北斗の拳」のようだ。最初は面白かったけどね。当時日本一おしゃれな音楽家、小山田まで褒めてた。最近はあずみの内面ばかりがクローズアップされている気がする。内面なんてクソ食らえ!
「味いちもんめ」も原作者が死んでしまったので、ショボクなくなったね。じゃあよくなったんじゃないかって?何を言う!「味いちもんめ」は、あのショボサが魅力だったんじゃないか!何も起こらない地味〜な感じが。最近は主人公の熱血度アップで、ふつうのマンガらしくなっちゃった。
もりやまつるは講談社系の人だね。「ファンキーモンキーティーチャー」の原作者だ。あと「天上天下唯我独尊」というヤンキーがボクシングに精を出すやつがある。オタクとヘビメタの兄弟のやつ「訳ありブラザーズ」もよかった。
とにかく、ヤンキーとかブルーカラー系の人物を描くのが抜群にうまい。顔がいい。ヤンキーの顔を描かせたら日本一だ。確信犯的な寒いギャグも冴え渡っている。関西人にしか出来ない仕事かも。
こういうマンガを褒めることこそが本当はオシャレなんだと声を大にして言いたいが、誰にも理解されないだろうし、小劇場界で一番オシャレについて語ってはいけない人間と言うことになっているので言わない。まあ、小山田は褒めないだろうなこんなマンガ。
ヤンキーマンガは日本に死ぬほどあるが、実は魅力的なヤンキーマンガって難しい。ある程度の美化はやむを得ないと思うけど、以外にリアリティない場合も多い。主人公に感情移入させる手前、パー券の売りつけとか先輩の妊娠のカンパとか、あまり描かれない。B−BOPとか、アンパンもやんないし、カツアゲもやんないし、喧嘩とたばことファッションだけ不良だなんて、絶対おかしい。私の学生時代、一番弱いモノイジメを率先してやったのはヤンキーだった。アウトロー的なかっこよさって言うより小ずるく立ち回る要領のいい連中というイメージが強い。西森博之の「今日から俺は」その嫌な感じを結構ちゃんと出せてたとおもう。でも、後半に行くに従って三橋もだんだん正義の味方っぽくなってイヤだったな。
「親父」は、ワイルドだけどヨワヨワな母子家庭のもとにものすごく強そうなお父さんが帰ってくるところから話は始まる。そして、まだ、話はあまり進行していない。もしかしたらすぐ終わるかも。
ヘタレヤンキーの長男も、派手姉ちゃんの長女も、お母さんも、そしてお父さんもいい感じで描かれていると思う。飲んだくれのお父さんのお父さんも。
暴力描写も現実感あって大変よろしい。そして、何よりも、作品全体に日本人がまさにどっぷり浸かって生きているくせに忘れた振りをしている「貧しさ」が横溢している。どこがそうというのでなく、描線の一本一本からにじみ出してくるんだ。素晴らしい。これはまぎれもなく21世紀を迎えようとする私たち自身を取り巻く光景なんだ。
「親父」もう少し続いて欲しいなあ。
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