no.101 もうベストセラーしか読まない (05.6.9)
去年「もう童話しか読まない」と宣言したような気がするが、すぐさま飽きたようで、あれっきり童話なんか読んでない。情操教育に活用されるべき毒にも薬にもならないオコチャマ文学なんざ腹の足しにもなんねえよ。薄汚れた大人の俺にも刺激になるような本を読ませろ!今はそんな気分だ。そう、俺はすぐ気が変わるのだ。でも難しい思想書、本物の文学とやらに立ち向かう気もさらさらない。一部のインテリにしか通 用しないモノになぞ興味はない。「Jポップ大好き」の理念としては、大衆的なものの価値だけを信じて進むのだ。と、いうことで今回のテーマはみんなが読むものを俺も読む。そして人気のある本しかもう買わない。今はそんな気分。
だが、今何が人気あるんだろう。何が話題の本なんだろう。もとより活字文化に疎いのでそれすらわからん。と、いうことでとりあえず去年の売り上げベストを調べてみました。以下はトーハン(本の問屋最大手)による2004年売り上げベスト20。
1 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 J.K.ローリング 松岡佑子 訳 静山社
2 世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一 小学館
3 バカの壁 養老孟司 新潮社
4 ドラゴンクエスト? 空と海と大地と呪われし姫君 Vジャンプ編集部 集英社
5 グッドラック アレックス・ロビラ フェルナンド・トリアス・デ・ベス 田内志文 訳 ポプラ社 1,000
6 蹴りたい背中 綿矢りさ 河出書房新社 1,050 4-309-01570-0 1,000
7 13歳のハローワーク 村上 龍 はまのゆか 絵 幻冬舎
8 川島隆太教授の脳を鍛える大人の音読ドリル 川島隆太教授の脳を鍛える大人の計算ドリル 川島隆太 くもん出版
9 キッパリ! たった5分間で自分を変える方法 上大岡トメ 幻冬舎
10 いま、会いにゆきます 市川拓司 小学館
11 新・人間革命(12)(13) 池田大作 聖教新聞社
12 死の壁 養老孟司 新潮社
13 もうひとつの冬のソナタ キム・ウニ ユン・ウンギョン うらかわひろこ 訳 ワニブックス
14 幸福の法 大川隆法 幸福の科学出版
15 蛇にピアス 金原ひとみ 集英社
16 頭がいい人、悪い人の話し方 樋口裕一 PHP研究所
17 ダーリンは外国人 ダーリンは外国人 (2) 小栗左多里 メディアファクトリー
18 冬のソナタ (上・下) キム・ウニ ユン・ウンギョン 宮本尚寛 訳 NHK出版
19 自分のまわりにいいことがいっぱい起こる本 原田真裕美 青春出版社
20 電車男
おお。「蹴りたい背中」と「蛇にピアス」はもう既に読んでるな。ではそれ以外を何も考えず一位
から順に読んでくとしよう・・・と思ったが、ここでふいに触手が止まる。 いくらベストセラーでも「人間革命」ってちょっとなあ。創価学会に興味がないと言えば興味アリアリだけど・・・創価学会の研究本、暴露本は何冊も読んだけど・・・つうかコレベストセラーなんだね。信者ってそんなにいるんだね。ちょっと今はパスだな。あと、大川隆法のも。創価学会や幸福の科学が何人人殺しをしたとか、殴ったとか、教祖が愛人何人はべらせたとか、批判的な言論を封じるために田中角栄と料亭で語り合ったとか、芸能人の誰が入信しているとかそういう話題は読みたいけど。教義をまるまる一冊読む気力今はない。抜粋でいいじゃん。そういうわけで宗教本はパス。「キッパリ!
たった5分間で自分を変える方法」「自分のまわりにいいことがいっぱい起こる本」とかいうのも宗教じゃないにしてもタイトルからして不気味さ満点でパス。何のセミナー本だか知らないが、マインドコントロールされたくないよ。と、いうことでいきなりパスの連発!こんな本ばっかで、大丈夫か、今回の企画?っていうか、大丈夫か、大衆?
あと、「ドラゴンクエスト? 空と海と大地と呪われし姫君」も、ゲームをあらかじめやってないと、読んでも面
白くないと思われるのでパス(ドラクエは旧ファミコン時代に挫折)。「
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 」も「ハリー・ポッターシリーズ」の映画そのうち観たいとは思ってるもののまだ一本も観てなくて、悔しいのでパス。「いま、会いにゆきます」は、マンガになってるのを読んだが、マンガの時点で既に内容が分からなかったので小説などとても読めない。パス。「冬ソナ」関連も韓流ブームなんてなかった説(捏造説)を支持するのでこれまたパスだ。
そんなわけでリストを眺めた途端にパスの嵐だが、そもそもはじめから何も読みたくないんじゃないの?このオヤジは。って思ったかい?当たらずとも遠からずだね。活字文化なんて親しみもてねえんだよ。だから腰が重いんだ。でも、頑張って(何のために?)興味のもてそうなやつから読んでみることにする。で、感想は以下に。
●ダーリンは外国人 ダーリンは外国人 (2)
文化の壁を超えて外人(白人)と恋愛、結婚した女のエッセイ風コミック。文化の壁を超えて女が外人(白人)と結婚するとき、その理由は次の2つしかない。1.巨根 2.ステイタス主義
だ。 1.に関してだが、男も女の胸の大きさやら足首の細さやら肌のきめ細やかさやらにこだわるので、女がチンポの大きさにこだわっても当然というか、お互い様なのだが、いつも不思議に思うのは男はみんないつもマンコが見たい触りたいなめたいと思っているのにマンコ自体の形状、大きさにはあまりこだわらないね。ミミズ千匹とか名器を表現する言葉はあるけど。それで女性を選んだりしない。女性はあまりチンポ見たがったりしないくせにチンポの大きさを割と重要視する。うーん、不思議だな。ところで今までのは全て本書には全く関係ない余談で、著者は2.のタイプのようだ。日本は敗戦国なので、白人の方が偉いのだ。白人とつきあうことを自尊心の拠り所とする人がいても無理のない話。まあ、それはしょうがないことだね。本書でも背負ってる文化の違いに当惑したりあきれたりする様が描かれているが、その背後から「でもこんな私って偉いでしょう」って本音がビンビンに伝わってくる。この本では描かれていないが、実際にあうと二言目には「だから日本はダメなのよ」とか「日本の男って話にならないわね」とか言うタイプであることは間違いない。こんな著者みたいなのが身近にいなくて俺は幸せだ。
●バカの壁
著者の養老孟司は解剖学者。そして脳にこだわる男。脳にこだわりながら死体を切り刻むのが仕事で、以前からこの男には興味があり、この書もとっくに既読だった。でも、何故かどんな内容だったかあまり印象ないな。たいして面
白くなかった気がする。10年前に読んだ「唯脳論」の方が刺激的だったし内容もよく覚えている。ただ「唯脳論」と聞くと「自己の脳しか実在しない」という独我論的認識論を指すのかなと思うが、実際読んでみると、微妙に違っていて、文明批評になっていて、そこが面
白かった。「バカの壁」にはそれ程重大な提起はなく、なんでいまさらこんな本がヒットするのか分からない。でも、同じ解剖学者でも養老孟司の方が布施英利より好き。布施英利は寒いと思う。「ドラゴンボール」を現代美術呼ばわりして悦に入る布施英利の寒さについてはここでは詳しく語るまい。
●頭がいい人、悪い人の話し方
すげータイトルにそそられるぜ。頭のいい人の話し方なんてのがあるのか!知りてー!頭の悪い人の話し方マスターしてー!まあマスターするまでもなく頭の悪い話し方してると思うけど。磨きかけてえ!山口もえちゃんやウド鈴木みたいな素敵なボケかましてえ!だが、そんなの一つも書かれてなかった!
これマジでタイトル変えた方がいいよ。 「知ったかぶりは部下に慕われないぞ!」「会議では自分の考えをしっかり持って臨もう」「説教ばかりする上司はこうやりすごそう」といった、頭のいい悪いとは全く関係ないオフィスやデートでの対人関係のマナーとモラルと処世術が並んでいるだけだ。常識補強本だね。「頭がいい」というより「知的」に振る舞うためのコツみたいな感じ。「知性と教養」=「頭のよさ」なのか?違うと思う。「頭がいい」と聞くと歴史を変えた天才達の多くは狂人すれすれの不適応者だったり、あるいは逆に「お利口な」社会適応の達人はヤンキー、職人、ヤクザの世界にいて中堅サラリーマンの世界にはいない。どちらにせよ「頭のいい」とは「知性」という言葉が想起させる行儀よく上品なものとは違う不作法で野蛮なものをイメージしてしまう僕と真っ向から対立する立場の本だ。ところで、この本、誰が読んでるの?ドカタじゃないよな。サラリーマン?
「知性」が重視されているといってもあまりにエレメンタリーなことしか書いてないので、本当に「知的」になりたかったらこんなの読まないでさっさと川端康成でも読み始めた方が早い。
この著者そもそもどういう人なんだろうと、プロフィールみたら、予備校等で小論文の指導してる人だった。納得!確かに小論文上手くなりそうな本だ。こういう本ばかり読んでるとキラリと光る一行が書けるようになりそうだね。・・・でもバタイユとかも訳してるよ。
バタイユ なんて読んだことないから誰が訳そうとかまわないけど、なんか俺の中のバタイユ観(バタイユについて言及している様々な本で培ったバタイユってこんな感じってイメージ)と激しく相克するな。バタイユファンの皆さんは訳がこの人でいいの?こんな人が訳していいの?
●世界の中心で、愛をさけぶ
男子高生と女子高生のセックス抜きのウブな初恋を描いた純愛ストーリー。で、悲恋モノ。女が白血病で死ぬ
。何コレ。ベタベタやん(何故か関西弁)。ふざけてんの?乙女チックなマンガでもまず見あたらないぜ!で、女のセリフを引用
「ずっと先のことを、今から考えてもしょうがないわ」
「しょうがないわ」ってアンタ、何時の人?少なくとも平成じゃないよな。 そもそも女が「わ」語尾を使った時代って実際あったのだろうか?わからないけど、とにかく、この女絶対ルーズソックスじゃないな。茶髪でもない。刺青もいれてない。あ、十数年前って帯に書いてあった。しかし、俺の思春期時代(二十数年前)でもあり得ないよな。著者のプロフィールみると1959年生まれだって。70年代の青春ってこんなイノセントな純愛があり得たのだろうか?しかし、昔臭いとはいえ、70年代なら70年代の匂いみたいなものってあると思うんだよ。そういうものをあえて廃して、まあ時代を特定させないニュートラルなムードを作って作品に普遍性を持たせる手法だな。これが逆に現実感ゼロを結果
する。さらに知り合ってからつきあうまでの描写が弱い。お互い好きになるまでの心の揺れやつきあってからのぶつかり合い、いざこざもなく、お互い申し分ない相手との純愛に向けてまっしぐらだ。そんなにもピュアでいいのだろうか?お子様童話の「家なき子」の方がまだ生々しいリアリティを感じられるってもんだ。
こんな童話以上におとぎ話度のめざましいこんな本が大人に売れてるなんて、一体世の中どうなってんの?何かの反動なの?そんなにも疲れてんの?
大丈夫か?大衆。
帯によれば柴崎コウは泣きながら読みふけったらしいが、柴崎コウは別に泣いてもいい。
●電車男
悲しいことにこの2ちゃんねる本が一番楽しく読めてしまった。2ちゃんねるのページレイアウトのままでストーリーが進行していくのはそもそも2ちゃんねるの引用だから当たり前なのだが、この異様な散文の形態がが恋愛小説としても成立してしまうところに文学としての斬新さがある・・・なんて下らないことを俺は言わないよ。文学と文学ならざるものの隙間で成立しているエンターテイメントだから素晴らしいのだ(あ、素晴らしいは褒めすぎか。「興味深い」ぐらいにしておく)。俺の演劇(らしきモノ)もそんなものでありたい。
でも、コレ俺はネタ説をとるね。 理由は、告るときや初キスのとき、初キスから「大人のキス」とやらに移行するとき、男の躊躇をさりげなく女の側がフォローする都合よさが、少年マンガの気弱な男が主人公のラブコメの典型的なパターンによく似ていると思われるからだ。あるじゃん。あの・・・「エイケン」とか・・・ちゃんとアプローチ(死語?)かけられない男性がもじもじしていると何故か女の方がすりよってくるみたいな。しかも、フォローはするけど、それはあくまでもさりげなく控えめで、あくまで男の側からリードしたような体裁を壊さないことで男のプライドも保護されるという微妙なことをしてくれるね。シャイな男が自分に都合よく抱いた願望、妄想そのまんま。だからネタ臭いんだよ。
ところでOLにアンケートを採った「あなたがイヤだと思う男のタイプは?」の回答の中に「誘わない男」と言うのがあってショックを受けたことがあった(これ、前に書いたっけ?)。誘わない男は既にしてキモいらしいよ。オフィスなる世界では。
部屋に閉じこもってネットしてゲームしてアニメ見ながら「アプローチかけんのヤだけど。向こうからチャンスがやってこないかなあ」とぼんやり白昼夢に耽っている者どもよ。一生お前らそのままだ。
でも、そんなこと分かっている上で妄想を楽しんでいるというのがこの作品の本意なのかもしれない。「ありえねえよ」と内心ツッコミながら、一時の夢にひたれる。そんな癒しの瞬間・・・なんかいたいけでいじましいねえ。どこか憎めない。
俺も誘い方とか女への話すときの話題とか知らないし、モテるために自分を磨こうとか思ったこと一度もないので、ある意味同じようなものだ。実はね。でも抱く妄想がこんな甘酸っぱい恋じゃなくて性犯罪ばかりなので、俺は癒されないけどね。
ところで、かつては2ちゃんねるとか朝まで読みふけったりしてたけど(演劇版ではない)、最近はあまり見なくなった。このヒットをきっかけに殺伐としたあのムードが緩和されたりしてないことを臨むよ。
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ちなみに「13歳のハローワーク」(村上龍)はどんな本か凄く気になったのだが、紀伊国屋書店に置いてなかった。本当に売れてたの?